読了。
ベストセラー「朗読者」や「逃げていく愛」などの作者による短編集。
「夏の嘘」というタイトルの短編も入っているのかと思ったらそうではない様子。
あくまで本のタイトルだったようです。
収録作品のうち「森のなかの家」という話は、ホラー映画みたいでおそろしかったし、「真夜中の他人」という話は、絶妙に気味悪い感じが(でも最後まで読みたくなってしまうところも)よかった。
好きだったのは、おじいさんとおばあさんがそれぞれ主人公の、「最後の夏」(おじいさん)と、「南への旅」(おばあさん)の二作品。
特に「最後の夏」はうますぎる。たとえば自分が年を取ったからといって、年を取った人の頭の中にあることを、これほどこつこつと言葉に置き換えて記せるだろうか? と考えると、本当にすごいなと思う。
「ぼくは以前、そのテーマについて書いたことがあるんだ。人生を決めるような大きな決断は、正しかったり間違ってたりするわけじゃない。ただその結果によって、違う人生を送るというだけなんだ。きみの人生がうまくいかなかったとは、ぼくは思わないよ」
これはおばあさんが主人公の「南への旅」に出てきた文章。おばあさんがうんと若かったころの恋人と再会したとき、恋人から言われた言葉。
本当にそのとおりだと思った。
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