言葉と音楽


今年の雪どけは本当に早くて、驚くほど。

去年も雪が少ないなあと思っていたけど、今年はそれ以上だった。

何しろもう道路にアスファルトが見えている。自転車に乗って買い物に行けそう。まだ3月なのに!

ただし冷たい風が強く吹く日が続いているので、本格的に冬のコートをクリーニングに出せるようになるのは、もう少し先かな。

春がくるのが、楽しみなようなそうでもないような。


この間、車の中で家族が買い物を済ませるのを待っているとき、CDケースに入っていたライナーノートっていうんでしょうか? を何気なく読んでいたら、ぶわっと泣きたいような気持ちになってしまい焦った。

村上春樹が選んだ13曲を集めたCDで、そのときたまたま流れていたのが、ナット・キング・コールの「サムタイム・アイム・ハッピー」だった。

ナット・キング・コールの声には、子供のころの良い思い出が詰まっているうえに、その「サムタイム・アイム・ハッピー」はとてもチャーミングな、心が温まるような曲だった。

そしてまたそのとき読んだ村上春樹の文章がとても良かった。

「僕はLPレコードが昔から一貫して好きだ。LPレコードのかたちが好きだし、手触りが好きだし、匂いが好きだ。その重さが好きだし、そこから出てくる音が好きだ」


わたしの心が思わず震えたのは、別に村上春樹のLPレコード愛に感動してだとかではなくて、この「好きだ」という言葉の繰り返しだったのだと思う。

好きということの強さ、豊かさ。

好きという気持ちが、誰かを幸せにする力の変わらなさ。

そのことが、この数行を通してぶわっと伝わってきて、ノックアウトされてしまったのだろうと思う。

また本当に、この文章を書いた村上春樹は、LPレコードのことを愛しているんだなとも思った。本気の思いを込めて作った表現物は、必ず誰かに真正面からキャッチされるものだから。


ところで今の話と正反対の話をひとつ。

いつかどこかで書こう書こうと思っていたこと。

「ここが一番良い!」と思って誰かを好きになったまさにその点こそが、将来「ここが一番嫌い!」となる点になりうる、っていう救いのない話を、何かで読んで知っていたのだけれど、ここ数年、だいぶ年上の女性から彼女の夫の不満話を聞くたびに「これは真実なのかもしれない」と思うようになった。

そうするとすべてが正反対になってしまう。

その夫が持っていないものこそが最上のものになってしまっている。今の彼女にとっては。

それはとても苦しいものだろう。


好きは素晴らしいものであると同時に、難しいものでもあるなあ~と思う。

それでも結局は「好き」を信じてやっていくしかないんじゃないかな。

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