とにかく


今読んでいる本。
パトリック・ジュースキント「香水」。

タイトルのイメージとは違って全然麗しい話ではなく、中身はサブタイトルが示す通りの不穏な話らしい、ということだけは知っていた。

「これから物語る時代には、町はどこも、現代の私たちにはおよそ想像もつかないほどの悪臭にみちていた。
(中略)
川はくさかった。広場はくさかった。教会はくさかった。宮殿もまた橋の下と同様に悪臭を放っていた。百姓もひとしく神父もくさい。(中略)
貴族は誰といわずくさかった。王もまたくさかった。悪臭の点では王と獣と、さして区別はつかなかった。王妃もまた垢まみれの老女に劣らずくさかった」

本文より抜粋。
冒頭の数ページを読んだだけで、舞台となる十八世紀のパリがとにかくくさかったのだということだけは伝わってきた。
この作品はフィクションだけれど、大々的に整理される前のその都市が衛生的でなかったことはどこかで聞いたことがある。

...というわけで、この本を読んでいる間は、時間を超えて、めいっぱい桁違いの悪臭を感じたいと思います。

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