冬になると


昨年末から年明け、一月末までに読んだ本。

冬になると特に読みたくなるのはゴシック・ホラー。

サラ・ウォーターズの「半身」は、少し前に買って本棚で待機していた本。

サラ・ウォーターズは、何年か前に、タイトルからしてもう不穏な小説「エアーズ家の没落」を読んで面白く、好きになった作家。

この方は、コルセットをつけた貴婦人が存在していた古い時代のイギリスを舞台に作品を多く描いていて、ミステリの要素もあるのでとても面白い。

今回読んだ「半身」も、怖いやらあっと驚かされるやらで、読書が捗った。作品の中の季節も冬で、たまたまこちらも厳冬期。なので臨場感には事欠かなかった。

難しい言い回しとかは全然ないし、女性ふたりが主人公なので、読みやすかった。


偶然にももう一冊の本、「キャロル」も、女性ふたりが主人公という点では同じ。

映画化されて初めて知った作品で(女神ケイト・ブランシェットが出ている)、映画が素敵だったので原作も読んでみた。映画版で一番好きなシーンは、主人公のうちの若い女性のほうが、悲しすぎてそれを受け入れられず吐くところ。あのシーンは胸に迫るものがあった。

ちなみにこちらの小説は時々内省的な記述が現れるので、そこはしっかり読んでついていく必要があった。


そうそう、その「キャロル」の中で、びっくりした箇所があった。

「ヒメウイキョウで風味をつけたピクルスとモッツァレッラチーズ、固ゆで卵ふたつも添えられていた。店で缶切りを借りるのを忘れたのでビールの缶を開けられなかったが、コーヒーなら魔法瓶に入っている。そこで缶ビールは後部座席の床に置くことにした」


店で缶切りを借りるのを忘れたのでビールの缶を開けられなかった、とある。

1950年代のアメリカでは、缶ビールは缶切りで開けて飲むものだったんだ! と衝撃を受けた。

道具がなくても気軽に缶ビールを開けられる現在からみれば、それは確かにちょっと不便かもしれないけれど、それはそれで高揚感が得られていいなあとも思った。

たまに飲む機会のある瓶ビールの、「栓を抜きました」という感覚には、リングを引っ張るときには味わえないワクワクがあるものね。


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